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「愛を読むひと」

現在、公開中の映画「愛を読むひと」(原作:朗読者)は、ほんとうに深く静かに魂を揺さぶられた作品だった。(主役のケイト・ウィンスレットの演技が素晴らしく、原作本より映画の方が感動した!)舞台は1950年代のドイツ。15歳の少年マイケルと、過去をもつ21歳年上のドイツ女性ハンナの切なくも哀しい愛の物語。詳しいストーリーはネタばらしになってしまうので、ここでは避けるが、二人の主人公が生きた時代は第二次世界大戦直後、ホロコーストの記憶がまだ生々しい時代だ。ふとした出会いでひと夏を過ごしたマイケルとハンナだが、彼女はある日突然、マイケルの前から姿を消す。そして、8年後、マイケルが法学生として裁判を傍聴している時、戦時中の罪に問われ被告となったハンナと再会する。マイケルはハンナとの愛を誰にも話すことなく、またどんな女性にも心を開くことなく、ハンナへの愛(もっと複雑な心理があるのだが)を貫くことに、人生を費やしていく…。

実は、この映画を観る1ヶ月ほどまえ、遠藤周作の「女の一生―キクの場合−」を読んだばかりだった。明治維新前夜の長崎、大浦を舞台として、隠れキリシタンの清吉と、彼を生涯愛した少女キクの話だ。遠藤周作のキリシタンを題材とした小説は「沈黙」をはじめとして数多くあるが、そこでは、「信仰」が人を救い、人を苦しめるという矛盾と向き合わなければならず、ここでも私は何度となく「魂を揺さぶられ」た。

ホロコーストも隠れキリシタン迫害も、時代の落し子だ。二つの作品は、出来事の善悪を論じてはいない。その時代を背景として「生きた」男女の愛の姿を通して、矛盾する人間存在を描きだしている。

私たちは誰もが、「時代」の影響を受けている。自分史を書くとき、時代背景は欠かせない要素だ。自分という存在を、時代のフィルターを通して見てみると、意外な視点が得られるかもしれない。また、同時代を生きてきた読者には共感を呼ぶことだろう。



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